初恋のゆりちゃん

こんにちは。風俗大好きお姉さんです。

実際にお会いした方に「思ったよりも健康そうでびっくりした」とか「意外に腕綺麗なんですね」と言われることがあります。

健康です。



今回は、私の初恋について書いてみようと思います。



私が初めて人を好きになったのは小学四年生のとき、相手は同じクラスだった女の子のゆりちゃんでした。

ゆりちゃんはクラスの中でも見た目は地味な子で、かといって気が弱いわけではなく、男の子にからかわれても怯まずに歯向かっていくような女の子でした。

ゆりちゃんのお家は今思えばすごく貧乏で、着ている服も何着かしか見たことが無かったし、といってもその服も洗っているのかすらも分からないほど汚れてよれていました。



みんなが授業で使う持ち物を学校に持っていくのに可愛いキャラクターの手提げ袋やお母さんの手作りのものを持つ中、ゆりちゃんはスーパーのビニール袋に図工の道具などを入れて来ていて、クラスのみんなも、幼いながらになんとなく『ゆりちゃんは汚い貧乏の子』といった認識があったように思います。



ゆりちゃんと仲良くなったのはクラスの中で二人ずつ構成される委員会が一緒だったからで、強気でハキハキとものを喋るゆりちゃんと居るのは居心地が良かったし、お互いが親友のような関係性になるのはすぐのことでした。



ゆりちゃんのおうちはアパートの2階にあって、ゆりちゃんは「おうちに友達入れたらお母さんがすごく怒るから」と言うので、私たちは公園や、雨の日なんかはアパートの階段下の少しスペースの出来た場所で遊びました。



それでも一度だけ、ゆりちゃんのお母さんに内緒でゆりちゃんにお家に入れてもらったことがあります。

今まで入ったことのなかったゆりちゃんのお家に入れるのが嬉しくて、でもゆりちゃんのお母さんにバレないか少しドギマギしながらもアパートの階段を上がり、薄いアルミのドアを開けるゆりちゃんに着いていくと、そこは見事なゴミ屋敷でした。



玄関に散乱する汚れた靴、リビングには所狭しとコンビニやスーパーのゴミ袋が散らばっていて、大人が読むであろう表紙の漫画本に飲みかけのペットボトルの山…

『こういうの、テレビでみたことあるな』そう思ったのを覚えています。

ゆりちゃんは嬉しそうに「この漫画が面白くて」とか「麦茶ならあるよ。飲む?」と部屋の中を案内してくれて、なんとも言えない生ゴミのニオイと、手を繋いでいるゆりちゃんの少しぎとぎとした手に言葉が出ませんでした。



「ねぇ、秘密の話していい?」



「うん。なぁに」



「私、一週間に一回くらいしかお風呂に入ってない。歯磨きもしてない」



「えっ。そうなの」



「嫌いになった?」



「…なってないよ」



「本当に。ありがとう!やっぱりやよいちゃんはうちの親友だね」



ゆりちゃんは、今思うとまともなご飯も食べていなかっただろうし、服も洗ってもらえてなかったように思います。

気のせいかと思っていたけれど、ゆりちゃんからはくさいにおいがしていたし、歯は子供なのに黄色くて、口の周りはいつも汚れていました。



それから、私たちは変わらず親友でした。毎日学校が終わると一緒に遊んでいたし、ゆりちゃんは駄菓子屋さんに行くお小遣いをもらっていなかったから、一緒に駄菓子屋さんに行って私が買ったお菓子を半分こして食べました。



そんな私たちのこの関係性が終わってしまうのもこの後すぐでした。

私たちの中に、なつちゃんという女の子が加わるようになってからです。



なつちゃんは大人しくて女の子らしい小さな子で、ゆりちゃんが声をかけて仲良くなってから私たちは三人で遊ぶようになりました。

なつちゃんもすごく優しい子だったので、三人で遊ぶようになってからも、いつもの楽しい空間は変わらないまま、いつものゆりちゃんのアパートの階段の下で遊ぶ毎日でした。



しばらく経ったある日のことでした。

三人で遊んでいるとき、ゆりちゃんがなつちゃんに「ねぇ、秘密の話があるんだけど」と言いました。

私は、すごく嫌な予感がしました。



「うちね、実はお風呂に…」



「まって!」慌ててゆりちゃんの口を手で塞ぎました。



ゆりちゃんのその暴露は、なつちゃんを信用してのことだったのかもしれないし、お風呂に入れない環境であることを相談したかったのかもしれません。

でも、私はそれをなつちゃんに知られることがすごく嫌でした。



私の、ゆりちゃんの、私だけが知っている秘密。

お風呂に入っていないなんて、ほかの人だったらイヤっていうけど、私だけは知ってて、ゆりちゃんの傍に居るのに。

どうして私だけ知ってちゃいけないの!?



その時に、私は初めて自覚しました。

わたし、ゆりちゃんのこと好きなんだな。親友としてではない。これは、漫画で見ていた、あの自分じゃどうしようもならないような気持ち、これが恋なんだな。



初めて感じたこの気持ちをすぐにでもゆりちゃんに伝えたくて、私は後日一人でゆりちゃんのお家のドアをノックしました。

すぐに「はーい」とゆりちゃんのお母さんが出てきて、「ゆりー、やよいちゃんだよ。」と家に居たゆりちゃんに声をかけてくれました。



「やよいちゃん。どうしたの?」



「ちょっと、話したいことがあって。」



二人でアパートの階段の下に座ると、私は緊張しながら言いました。



「あのね、私、ゆりちゃんのことが大好き。」



「うん?うちもやよいちゃんのこと大好きだよ。」



「違くて。その、…恋愛みたいな。一番の好きだよ…。」



ゆりちゃんは少し固まったあとすぐに、にっこり笑って「ありがとう。でも、私は親友として好きだから。ごめんね」と言いました。





その後、ゆりちゃんと遊ぶこともなくなりました。というのも、気持ちを打ち明けてしまったことが気まずかったのではなく、高学年になって自然と私は派手なグループに属していたし、ゆりちゃんは変わらずクラスの子に遠巻きにされていました。



同じ中学校に進学したけれど、それからも特別話すこともなく、私たちは卒業を目前にしていました。



卒業式の前日に行われた卒業文化祭では、それぞれ有志で集まった子たちが出し物をしていて、私はバンドの出し物をする子たちに「キーボードが足りないから」と頼まれてサポートメンバーをして、ほかにはAKB風で歌って踊るグループが居たり、男の子がふざけてオタ芸を披露していたりしました。



そんな中、ゆりちゃんと変わらず仲良しだったなつちゃんがステージに出てきて、ステージにはボーカロイドの曲が流れ始めました。

ゆりちゃんとなつちゃんが踊り始めたとき、会場はドッと沸きました。



運動神経がなかったゆりちゃんは、ボーカロイドのテンポの早い曲で上手とは言えないダンスをしていて、会場にはバカにする笑いが響いていて、それでもゆりちゃんは笑顔でした。

私はなんだか泣きそうになりながら、早足で会場を出るのでした。





大人になってから、地元に帰ったときに一度だけゆりちゃんとすれ違ったことがあります。

噂には聞いていたけれどゆりちゃんのお母さんは脳梗塞で倒れてしまってから下半身付随になってしまったらしく、車椅子に乗ったお母さんをゆりちゃんがにこにこしながら押していました。



すれ違った時、お互い目が合ったような気がします。でも、私たちはどちらからも声をかけませんでした。



化粧気もなく、変わっていないゆりちゃんの姿に、心臓がキュッとするのが分かりました。









やよいちゃんの初恋のお話でした。



それでは、また。