きてよパーマン


下記の記事は2019年11月24日に開催された文学フリマ東京にて販売された『EMO & ANISON 〜アニソンで語る、僕らの”あの頃”〜』(作成:荏の花地球人会)に寄稿させて頂いたものです。


(冊子冒頭文引用)
各人が『エモい』と感じるアニメソングについての想いを綴った本です。
アニメシーンについての批評本ではなく、各人の思い出に根付いた曲の感傷について言及するものです。



曲:パーマン「きてよパーマン

パーマンと私の青春』 やよいちゃん



藤子・F・不二雄によるテレビアニメ『パーマン』、その主題歌の『きてよパーマン』という曲を聴いたことがあるでしょうか。今の若い世代の方は『パーマン』の存在を知ってはいても、実際にアニメを観たことがある方は少ないのではないのかと思います。私もその一人で、あ、ドラえもんの作者の昔のアニメだ、そんな程度の認識でした。
それでも、初めて『きてよパーマン』を聴いたあの瞬間を思い出すと、いてもたってもいられない気持ちになるのです。

当時私は18歳でした。古いカラオケボックスで、狭い部屋に5人で大麻のジョイントを回して吸っていました。「ニオイ、やばいね」「店員来たら人生終わるね」段々とキマってきた私たちは、目をとろんとさせながら話しました。そのうちK君がマイクを手に取り、テンションが上がったのか次々曲を入れて歌い出しました。
その頃私はいわゆる『バッド』(バッドトリップのことです。気分が悪くなり色んなことを勘ぐるようになります)に入ってしまっていて、頭の中は蛍光色でチカチカ光って、マリオが飛んだり溶けたり分身したりするのをじっと耐えていました。
ふと意識を現実に引き戻すと、すぐに軽快なエレクトーンのメロディが流れてきました。そう、この時流れたのが『きてよパーマン』です。脳内がビリビリ痺れるような、震えるような気持ちがしました。エレクトーンの音、そしてなんといってもその歌詞が、今の私たちにとっては輝いて見えました。

『いくよ待ってて 友達になろう
手と手 心と心 繋いでみんなで飛ぼうよ あの空へ』

仲間たちと、みんなで空へ飛べる、私たちはドラッグがあれば無敵になれる!なんだこれは!すごい!最高の曲じゃないか!
そんな風に思ったのは私だけでは無かったようで、パーマンを歌っていたK君も頭を抱えて何か叫んでいます。「すごい!すごい!」みんなそれぞれ歓喜の声を上げました。この目が覚めるような迫力あるメロディラインに、みんな興奮していました。

ある年の大晦日、MDMA、通称『罰』をキメて、みんなでカラオケボックスに入りました。「あれ、入れよっか」と誰かが言うと歓声が上がりました。あのときと同じく、K君が身体を揺らしながら歌い始めました。
なんて、なんてハッピーなんだ!
みんなそれぞれ頭に響く音に頭を抱えて悶えています。この曲はドラッグを嗜む者のために作られたのではないだろうか。この曲をみんなで聴くだけで、心が震えて、なんとも言えない気持ち良さが身体中から湧き上がりました。
高揚感もそのままカラオケボックスを出ると、みんなで近くの神社に初詣をしに行きました。「幸せになれますように」そう神様にお願い事をしたあと、今度はみんなで 罰をキメてディズニーランドに行こう!と誰かが行って、みんながワッと湧きました。

『きてよパーマン』を楽しそうに歌っていたK君は、その後すぐに首を吊って自殺しました。それから、なんとなくその頃一緒に居たドラッグ仲間とも疎遠になりました。
この文を書くにあたって久しぶりに『きてよパーマン』を聴いてみたけれど、色んな気持ちが湧き上がり身体がぶるぶると震えました。あの青春の日々を、この曲とともに思い出すのです。